今回は、大電流コネクタや複合コネクタのような大電流を通電する前の机上検討時に欠かすことができない「ディレーティングカーブ」についてのお話をさせて頂きます。
「コネクタの接触抵抗」というコラム中で、出来るだけ低い電気抵抗(=低接触抵抗)であることが重要な要素という話をいたしました。コネクタの接触抵抗を出来るだけ低くすることは重要ですが、コネクタ選定時、許容電流を把握することも同じくらい重要となります。そこで役に立つのが今回のテーマのディレーティングカーブとなります。
ディレーティングカーブは、一般的に、横軸に周囲温度、縦軸に電流値(=許容電流)を示したグラフとなります(他の事例としては、縦軸に負荷率(%)の場合もあります)。
これにより、それぞれの周囲温度における許容電流を把握することが可能になります。許容電流を超えてしまうと、耐熱温度を超えてしまうので、使用不可となってしまいます。下図は、複合コネクタであるコンビタックユニークのディレーティングカーブのグラフとなります。(耐熱温度90℃)
このグラフからわかることは、主に以下の4点となります。
1. コンビタックユニークの耐熱温度は90℃なので、周囲温度が90℃の場合、許容電流が0Aとなるので通電不可。
2.周囲温度70℃、電線サイズ35mm2×2本に通電する場合、80Aまで通電可能
3.周囲温度40℃、電線サイズ35 mm2×2本に通電する場合、130Aまで通電可能
4.周囲温度40℃、電線サイズ35mm2×6本に通電する場合、90A程度まで通電可能
ディレーティングカーブはあくまで机上検討なので、最終的にはお客様の実機での使用環境の検証が必要です。また、電線の耐熱温度がコンビタックの耐熱温度90℃より低くなる場合は、その温度がコンビタックモジュール(電線付き)としての耐熱温度になるので、注意が必要です。
ここまでのまとめとして、ひとつクイズを出してみたいと思います。
問題:上記のディレーティングカーブによると、周囲温度が40℃、35mm²×6本の電線に通電する場合、通電可能な最大電流は90A程度となります。上記の条件のまま、周囲温度のみが60℃に上昇した場合、許容電流はどの程度減少するでしょうか?
A:約10A
B:約15A
C:約20A
D:約25A
正解は、下にスクロールをするとあります。
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答えは、c) の約20Aです。ディレーティングカーブによると、周囲温度60℃の場合の許容電流値は約70Aとなるので、約20A低下します。
いかがだったでしょうか? クイズは正解できたでしょうか?ディレーティングカーブは、グラフの見方さえ覚えてしまえば、コネクタ選定する際にかなり役に立つので是非、マスターしてみてください。
ストーブリエレクトリカルコネクターズ社の大電流コネクタや複合コネクタは、ディレーティングカーブをカタログに記載している製品もあるので、コネクタ選定時の一助になれば幸いです。
産業用コネクタ&コンポーネンツを運営する丸紅エレネクストでは、海外と国内の技術と実績のあるコネクタの専門メーカーと密接な協業体制を築いています。そうした協業体制を基に、製品の仕入れから販売、販売後のサポートまで手厚く行うことで、自動車業界、半導体業界、宇宙業界まで幅広くのお客様と取引をおこなっています。
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