
様々な用途に使用されている高周波ですが、周波数が高くなるにつれ、直流や商用電源(50/60Hz)、低周波の際には殆ど気にしなくてよかったことについて考慮する必要があります。高周波の影響の例を示します。
高周波電流が導体を流れる際、電流は導体の表面近くに流れます(表皮効果)。これにより、導体内部に殆ど電流が流れないため、抵抗値が増加します(伝送損失の増加)。この現象を改善するために、導体に電気抵抗の低い銀メッキを付けたり、導体にリッツ線(複数の細いエナメル線等を撚り合わせた電線)を使用したりします。
高周波回路では、伝送線路や接続点などでインピーダンス(交流回路での電圧と電流の比)を一致させるインピーダンス整合が重要になります。整合が取れていないと、信号の反射(元の方向に戻る現象)が発生し、電力損失や波形の歪み、ノイズの原因となります。
高周波は電磁波として放射され易いため、周辺の回路や機器への干渉(EMI:電磁妨害)や、外部からのノイズの影響(EMS:電磁感受性)を受け易くなります。そのため、電磁シールドや電波吸収体、ノイズフィルタなどを追加するなどの対策が必要となります。
シールドにつきましては、あらためて別コラムで紹介させていただく予定です。
寄生素子(寄生抵抗、寄生容量、寄生インダクタンス)とは、回路図には記載されていないが、部品や配線などに存在する電気的な性質です。これらは直流や低周波では影響はあまりありませんが、高周波では影響が大きくなってくるため、考慮する必要性があります。
・寄生抵抗:前述した表皮効果が関連します。周波数が上がるにつれ、ケーブルや配線パターン等の伝送線路の抵抗値が上がっていきます。
・寄生容量:近接したケーブルや基板の配線パターン等の伝送線路間、コイルの巻き線間などに生じる容量成分(コンデンサの働き)です。
・寄生インダクタンス:ケーブルや基板の配線パターンに生じるインダクタンス成分(コイルの働き)です。経路が長いほど増加します。
他にも高周波では様々な影響があり、それらを考慮した設計が必要になります。
高周波で使用するコネクタや同軸ケーブルにおいて、インピーダンス、カットオフ周波数(遮断周波数:信号の強度が3 dB落ちる(電力が半分になる)周波数で、使用可能な周波数範囲の目安)といった仕様は、非常に重要となります。これらの値は、中心導体の外径(d)、外部導体の内径(D)、中心導体と外部導体の間にある誘電体の比誘電率(εr)で決まります(空気の場合はεr≒1、テフロンの場合はεr≒2.1)。
後述するコネクタの種類において、〇〇mmというのは、外部導体の内径(D)の寸法を表しています。
・同じ誘電体を使用している場合、中心導体の外径と外部導体の内径の比(D/d)が大きくなると、インピーダンスは高くなります。
・同じ誘電体を使用している場合、中心導体の外径や外部導体の内径のサイズが小さくなると、カットオフ周波数は高くなります。
・同じ同軸を使用している場合(中心導体の外径(d)、外部導体の内径(D)に変更が無い場合)、誘電体の誘電率が小さくなると、インピーダンスは高くなり、カットオフ周波数も高くなります。
一般的に、無線通信やデータ通信用途ではインピーダンス50Ω、映像の伝送にはインピーダンス75Ωを使用しています。
コネクタの形状は規格で決まっており、同じ種類のコネクタであれば、他メーカーのコネクタとも嵌合させることができます。下記に代表的な同軸コネクタの例を記載します。
最も使用されている同軸コネクタとなります。DC~4GHz程度(50Ω)まで使用できます。バイヨネットにより、簡単に嵌合させることができます。インピーダンスが50Ωと75Ωの2種類があり、使用する際は混在しないように注意する必要があります。
DC~8GHz程度まで使用できます。耐久性があり、ハイパワーで使用することができるため、携帯電話の基地局などで使用されます。
耐久性に優れた、比較的大きなサイズの高周波向け同軸コネクタです。DC~18GHz程度(50Ω)まで使用できます。インピーダンスが50Ωと75Ωの2種類があり、使用する際は混在しないように注意する必要があります。
DC~18GHz程度まで使用できます。小型で幅広く使用されている同軸コネクタで、誘電体にテフロンが使用されています。3.5mm/2.92mmコネクタと嵌合させることはできますが、SMAの加工精度が悪い場合、3.5mm/2.92mmコネクタ側を破損させる恐れがあるため、注意が必要です。
DC~26.5GHz程度まで使用できます。SMAコネクタ及び2.92mmコネクタと嵌合が可能ですが、SMAコネクタとの嵌合には注意が必要です。SMAコネクタより機械的強度は優れています。
DC~46GHz程度まで使用できます。Kコネクタと呼ぶこともあります。SMAコネクタ及び3.5mmコネクタと嵌合が可能ですが、SMAコネクタとの嵌合には注意が必要です。
DC~50GHz程度まで使用できます。1.85mmコネクタと嵌合させることができます。
DC~67GHz程度まで使用できます。Vコネクタと呼ぶこともあります。2.4mmコネクタと嵌合させることができます。
DC~110GHz程度まで使用できます。中心導体は非常に細いため、特に取り扱いに注意が必要です。
上記に記載する周波数範囲は代表的な値であり、コネクタメーカーや価格帯により周波数範囲は異なりますので、使用の際には対応する周波数範囲の確認が必要となります。
産業用コネクタ&コンポーネンツでは、高周波に対応したコネクタやケーブルを取り扱っています。加えて、多極の同軸コネクタや、同軸と電源,同軸以外の通信,流体を複合したコネクタのご提案なども可能です。
また、コネクタの特注対応や、コネクタとケーブルとのアセンブリなどの対応も可能ですので、是非ご相談下さい。