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光ロータリージョイントの構造・用途・機能

光ロータリージョイントの構造・用途・機能

前回の記事では、「電気ロータリージョイント(スリップリング)の構造・用途・機能」について解説いたしました。今回のコラムは光ロータリージョイント(シングルモード光ファイバー(125/9)を前提)について解説いたします。

 

光ファイバー市場においては、主にマルチモード(125/50,125/62.5)とシングルモード(125/9)の2種類が普及しており、今日ではシングルモード光ファイバー(125/9)が通信分野において主流となっています。これは、より高速でより多くの情報伝達が求められる傾向が強まるに従って、マルチモードではなくシングルモードがこの傾向により適応できるからです。

光ロータリージョイントの構造

ここではFocal社の光ロータリージョイント(Fiber Optical Rotary Joint:FORJと称する)に関して説明させて頂きますが、構造上メーカー機密事項が多い為、端折った記述になってしまうことをご容赦下さい。

 

ワンパスの光ロータリージョイントの場合、光ファイバーと光ファイバーとを回転軸上に非接触に対向させます。それぞれの光ファイバー端面にはコリメーターレンズと呼ばれる光学素子が装着されています。このコリメーターレンズにより、光ファイバー端面から気中に出てくる光の広がりを抑えながら均一な円柱状ビームにして、もう一方のコリメーターレンズに入射させます。コリメーターレンズに入射した光ビームは、光ファイバーに収束します。このようにして、光ビームの伝達ロスを最小限に抑えています。

 

複数光パスの場合は、それぞれの光ファイバー端面にコリメーターレンズが装着されている点は、ワンパスの場合と同じですが、コリメーターレンズから出た円柱状ビームはミラーあるいはプリズムを経てもう一方のコリメーターレンズに入射するまで複雑な経路を伝搬します。コリメーターレンズは、光ロータリージョイント、あるいは後の本コラムシリーズでも触れる非接触式光コネクタの構成要素において極めて重要な光学素子になります。ここで、その役割を以下に示したいと思います。

コリメーターレンズの役割

・光ファイバー切りっぱなし端面にコリメーターレンズ装着無しの場合:

光ファイバーから出た円錐状に拡散した光の多くの部分(上図の斜線部分)が光ファイバーコア部(φ9μm)外に散逸してしまう。すなわち、光伝達ロスが大幅に増大します。

・光ファイバー切りっぱなし端面にコリメーターレンズ装着した場合:

光ファイバーから出た円錐状に拡散した光はコリメーターレンズに入ると平行(円柱状)ビームに変わり空気中に出てきます。相対するコリメーターレンズに平行ビームが入ると光ファイバーのコア部(φ9μm)に収束します。光伝達ロスは、コリメーター装着が無い場合〈前述)に比べて大幅に減少します。

*特記事項
1)光ファイバーを切りっぱなしに(切断)する場合、光ファイバーにコーテイングされている保護層(多くの光ファイバーは、厚さ≒59㎛)を剝がしたうえ光ファイバー長手方向に対して垂直に切断しなくてはなりません。この工程は非常に緻密で高精度が要求されます。そのため、とても高価な専用装置(通常は、加工にはレーザー光が用いられている)がそこでは使用されています。

 

2)コリメーターレンズを光ファイバー切断面に適切にボンディング(接着)する技術は、某光学材料メーカーの特殊技術になります。

これ以上の構造をここで説明することは、構造の複雑さのみならず、メーカーノウハウ・機密事項が多くこれ以上詳しく記述することが困難であるためご容赦ください。ここで記述できる事項としては、複数光パス伝達の光学的構造は大きく分けて2種類あることです。

 

いずれの構造も端面にコリメーターレンズを装着した光ファイバーの一対を非接触で配置しています。その光ファイバー一対の間の光学系の違いです。それぞれの構造的特徴を以下に記述します。

 

(ⅰ)ミラータイプ:ミラーを組み合わせた構造のもの
複数のミラーとギャ(歯車)等を組み合わせた機構で複数の光ファイバーパスをそれぞれ独立して光信号伝達を実現しています。光ファイバーの1つのパスに対して、1つの光学系モジュールが対応する構造のため、複数の光パスと同数の光学系モジュールの直列連結となります。

 

そのため光パス数の増加に従って光ロータリージョイントの全長は大きくなります。各モジュールは回転部と静止部(磁石の磁力による位置固定)から成り、各回転部間はギャを介して連結され、回転が同期する構造となっています。

 

(ⅱ)プリズムタイプ:1つのプリズム構造
複数の光ファイバーからの光ビームを1つのプリズムで受けます。それぞれの光ビームのプリズムへの入射、光ビームのプリズム内での経路、プリズムからの出射は、光ビーム毎に異なり一対一で決まります。回転機構はギャが用いられており複雑です。許容光パス数以内であれば、光パス数に関わらず本体寸法は同一です。(ミラータイプは、パス数が多くなると本体長も大きくなります)

 

Focal社では、3種類のプリズムサイズ、すなわち3種類のプリズムタイプ光ロータリージョイントサイズを提供しています。許容光パス数は、小さい方から、≦17パス、≦31パス、≦52パスとなります。

光ロータリージョイントの機能

機能としては、光ファイバーの回転接続インターフェースを担います。

 

光信号通信(光ファイバーのバンド幅)、ギガ(G)Hz~テラ(T)Hzレベル、の伝達に対応します。ただし、光パワー(例えば、レーザー加工機などの光)の伝達はできません。

光ロータリージョイントの用途

用途としては、光通信用光ファイバーの回転接続のある機器・装置になります。

 

高速通信、大容量データ通信、長距離通信(数㎞~数十㎞レベル)を必要とする場合、今日ではシングルモード光ファイバーが用いられる傾向であります。シングルモード光ファイバー通信はこの傾向に合致しており、電気信号伝達(電線)に比べて伝達ラインの長距離化、高速化、軽量化、につながり、雷撃にも強く、更に電磁波障害(EMI:Electro-Magnetic Interference)が無いことが利点となります。

 

前回コラムの電気スリップリングの用途で記述しましたとおり、ROVの船上ウィンチ装置に用いられる用途が代表的であります。近年、ROVの大深度化に伴い、船とROV間の通信ケーブル(アンビリカルケーブルに含まれる)も長くなっている背景がありこのフィールドにおいて光ファイバー通信が主となっています。光ファイバー通信の信号の元は電気信号であり、この電気信号を光信号へ変換し、光信号を伝達した後、光信号を電気信号への変換処置操作は必須となります。この一連の変換を担うデバイス、メディアコンバータが備わっていることが光ファイバー通信において必要不可欠となり、更に多数の光通信チャンネルを持つ場合は、CWDM(Coarse Wavelength Division Multiplexing)あるいはDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)などの波長分割多重装置が必要となります。

 

Focal社では、複数の電気信号(シリアル信号、イーサネット、ビデオ信号など)伝達を扱う用途にTDM(Time Division Multiplexing)、すなわち時分割多重方式と前記電気信号-光信号/光信号-電気信号(E/O-O/E)変換、CWDMを組み合わせたマルチプレクサ装置を提供しています。
光ファイバー通信を検討されるユーザー様には、光ロータリージョイントと合わせて推奨できる製品となります。

次回は流体ロータリージョイントの概説です。乞うご期待ください。

 

詳細についてお知りになりたい方はお気軽にご相談ください。

 

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