回転接続、すなわち静止側(stationary side)と回転側(rotary side)間のインターフェースの構造体としてかつ媒体伝達を担うデバイスをロータリージョイント(rotary joint)と称します。このデバイスは自ら外部に何ら作用を及ぼすものではない受動的なもの、すなわち受動デバイスになります。
本記事の中で光通信に必要なロータリージョイントとは異なったデバイスにも触れています。 概念的な説明になりますが、諸々著作権等に抵触しないようにすべて言葉による説明を試みます。
ロータリージョイントの形態を伝達媒体(電気信号・電力、光信号、空・油圧)により分類すると次の3種類に大別することができます。
(1)電気ロータリージョイント(一般にスリップリングと称されます)
(2)光ロータリージョイント
(3)流体ロータリージョイント(一般にスイベルジョイントとも称されます)
これら(1)から(3)を組み合わせ、一体型複合ロータリージョイントを設計・製造できるメーカーが、カナダにあるFocal Technologies Corporation(以下、Focal社)という会社です。
それでは、前記の各ロータリージョイントの構造・機能・用途を見てみましょう。ロータリージョイントは、基本的にケーブル(電線、光ファイバー、流体ホース、電気・光複合ケーブル)の回転接続に用いられています。
電気伝達の静止側と回転側のインターフェースには、接触式と非接触式があります。リングとブラシから構成される接触式は、一般的には「スリップリング」と呼ばれています。1接点は、リングとブラシの組み合わせから成り、接点数(極数)が多くなるとリングとブラシの組み合わせが絶縁リングを介して積層することとなり、スリップリング全長が長くなっていきます。電流、電圧が高くなると、リング・ブラシサイズは大きくなり、それにともないスリップリングの外径寸法は大きくなっていきます。
また水銀などの金属流体を用いたものも接触式に含まれており、非接触式は電磁誘導、導波路の原理を用いたものがあります。
電気信号(一般には接触式の電気ロータリージョイントにおいては、数百MHzレベルの信号伝達が上限と言われています)並びに電力(前記のとおり、高い電力程、リング・ブラシも大きくなり本体の外形・長さも大きくなります)の伝達を回転状態でも行うことができます。近年の傾向としましては、伝達信号の大容量・高速化、そして下記用途における大深度・長距離傾向において、電気伝達は制御信号あるいは電力が中心となりつつあります。
このような背景ゆえに電気信号伝達は、後ほどご説明する光ファイバー・光ロータリージョイントに委ねられる傾向が強まっています。
海洋装置・機器(代表的な機器として無人探査機ROV;Remotely Operated Vehicle)に特化したスリップリングを設計製造しているのが先ほどご紹介しましたFocal社になります。主な用途は、海(水)中を潜航するROVと 通信、あるいはROVへの制御・給電を行う船上コントロール装置からのケーブル(アンビリカルケーブルと称します)の引き出し・巻き上げる船上ウィンチです。このウィンチ装置の回転ドラムに用いられます。Focal社は、水中下の2次ウィンチ用均圧(油漬け)対応スリップリングの設計製造も対応可能であり、わが国においては国の出先機関である海洋関係の某研究開発法人のROVのケーブル用ウィンチにも採用されています。