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光ロータリージョイントにおける挿入損失増加の原因と対策

光ロータリージョイントにおける挿入損失増加の原因と対策

前回の『電気ロータリージョイントに関する取り扱い・不具合モード等について』は、以下よりご参照いただけます。

>>電気ロータリージョイントの取り扱い・不具合モード等について

 

光ロータリージョイントの不具合モードは、当該製品が使用されている光ファイバー信号回路の不具合モードから切り離して述べることが難しいです。したがって、本コラムでは光ファイバー信号回路の不具合モードをベースにして解説します。

光ロータリージョイントにおける挿入損失増加の主な事象

挿入損失(光信号伝播時の信号強度減衰度合)の増加については、主に次の2点がその典型的な事象になります。

1)突如として光信号が途絶え、伝播しない

通常、光信号伝播具合は、光源/光パワーメーター等で計測します。挿入損失は、”㏈”単位で示されます。この値が数㏈~10㏈程度と計測された場合は光信号が「通っている」レベルになります。稼動中の光信号回路において、突然信号が途絶えた場合、光回路に備わった光信号ディテクタ(PD:フォトダイオード)感度にもよりますが、挿入損失は数十㏈あるいは計測不能レベルになります。この場合、光回路(光源~光ファイバー接続部、光ファイバー、スプライス部やコネクタ部あるいは光ロータリージョイント内部)のどこかで「断線」状態となっている可能性が高いです。「断線」状態とは光回路が途切れている状態であり、すなわち挿入損失が数十㏈以上(計測器によっては、挿入損失計測不能な状態)に達します。

光ファイバーはその材質(石英系、ガラス類)・構造(φ125㎛の石英系材質に保護プラスティックコーティングを施し~φ900㎛)ゆえに、取り扱いには注意を要します。引っ張りにはある程度耐性があります(光ファイバーの種類、材質、含まれるケーブル構造等による)が、キンク・屈曲に弱く、最小曲げ半径は30mm程度が通常範囲となります。

最近では、最小曲げ半径15mm、10mm以下の製品も市場に出てきていますが、まだまだ少ないです。また、最小曲げ半径以下に曲げると光伝達性能が低下する(挿入損失が規定値以上に増大する)ばかりでなく、光ファイバーの破断にもつながる可能性があります。さらに、側圧(光ファイバー側方から挟み込む力や荷重を掛けたりすると生ずる)を掛けないようにすることも必須事項になります。

次に、光ファイバーの取り扱い上、さらに気を付けるべき事項は、「マイクロベンド」です。光ファイバーに側圧が掛かると光ファイバー中心部の光の通り道を構成しているクラッド・コア境界部に側方ストレスによる数㎛レベル以下~サブ㎛の微小な曲率半径を持った微視的な曲がりや歪が生じます。これは目視では確認することは不可能です。このような微視的な曲がりを「マイクロベンド」と呼びます。このマイクロベンドの発生により、光の挿入損失が増大してしまい、さらに「断線」(挿入損失が数十㏈)に相当する状態にもなり得ます。また、次に記述する「光信号が途絶えることはないが、製品規定値を逸脱する」という状態にもなり得、これも非常に厄介な事象のひとつです。

以上の事柄は、光ロータリージョイントのアッセンブリにもあてはまります。光ロータリージョイント固有の不具合モードで、光信号回路の「断線」状態にもなりうる事象としては、内部光学構成部品の軸ずれがあります。この事象の原因は、当該製品が仕様規定を逸脱した周囲環境条件、特に振動・衝撃等の力学的要因、急激な温度変化などに曝された場合です。

このような外的作用により、光信号の「途絶え」、すなわち「断線」事象が発生する恐れもあります。また、「断線」事象にまで発展しないまでも、次に述べる光信号の劣化(減衰増加)の可能性も高まります。

2)光信号が途絶えることはないが、製品規定値を逸脱する

数㏈レベルの劣化(減衰の増加)は、前述のマイクロベンド発生の他、多くの場合が製品光学系の汚染・傷、あるいは振動・衝撃、急激な温度変化等の外部からの作用による光ロータリージョイント光学系の軸ずれに起因しています。

製品光学系の汚染・傷のなかで最も頻繁に生ずるのは、ピグテイル端末の光コネクタの汚れ・傷です。特に着脱頻度の機会が多い場合(据え付け、定期検査、オーバーホール時など)にコネクタ端面にダストなどが付着したり、付着した状態での嵌合などによりコネクタ端面が傷ついたりすることで、これが挿入損失増大につながります。

光ロータリージョイントにおける挿入損失増加の対策と対処方法

上記1)および2)のいずれの事象も製品のハンドリング・使用方法・周囲環境の問題に帰結します。つまり、光ロータリージョイント、光ファイバーや光コネクタの性質・構造を認識したうえで適切に取り扱うことが、光ロータリージョイント不具合の防止策になります。

これらの事象が発生した製品は、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer、光時間領域反射計)と呼ばれる計測器により発生個所の確認・特定が可能です。この計測器は光ファイバー回路・機器の保守やトラブルシューティングには必要不可欠で、さまざまな機種が光ファイバー関連計測機器メーカーより市場で販売されています。不具合事象・発生部位を確認、特定した上で、メーカーにおける不具合箇所の詳細調査・再調整あるいは、修理等、適切に対処することが必要になります。

光ロータリージョイントの詳細についてお知りになりたい方はお気軽にご相談ください。

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