

過去のコラムでは、大電流コネクタを選定する際に重要となるポイントについて解説しました。
(大電流コネクタ(電源コネクタ)の技術的な選定ポイント | 専門情報 | 産業用コネクタ&コンポーネンツ)
大電流を扱う場合、発熱量は電流の二乗に比例して増加するため、わずかな電流増加でも温度上昇に大きく影響します。そのため、1本のケーブルや1つの接続経路では許容電流が不足する場合、複数本のケーブルや複数の導体を並列に接続し、電流を分散させる方法が検討されることがあります。理想的には、同様な経路を2つ並列にすれば1経路あたりの電流は半分となり、各経路で発生する熱を抑えられるように思えます。
しかし実際には、並列にしたからといって電流が完全に均等に流れるとは限りません。
並列接続で注意すべきポイントが「電流の偏り」です。電流は、抵抗値の低い経路に多く流れます。並列にした各経路の抵抗値が同じであれば電流は均等に分かれますが、実際の配線や接続部では抵抗値に差が生じる場合があります。
この抵抗には、ケーブルそのものの導体抵抗だけでなく、圧着部、端子接続部、ボルト締結部、コネクタ接点部などの接触抵抗も含まれます。これらのわずかな差が、電流の偏りに影響します。

例えば、2本のケーブルを並列にして100Aを流す場合、理想的には50Aずつ流れることになります。しかし、片側の経路の抵抗がわずかに低いだけで、60Aと40Aのように電流が偏る可能性があります。この場合、60A流れる側では発熱が大きくなります。発熱は電流の二乗に比例するため、電流差以上に温度上昇の差が大きくなる点に注意が必要です。
また、見た目には同じような配線でも、分岐・合流の位置や接続点の違い、圧着品質、締結状態によって各経路の抵抗は変化します。
特にボルト締結では、締付トルクや座面状態、振動・熱サイクルによる緩みが接触抵抗に影響し、局所的な発熱につながる場合があります。
一方、コネクタ化することで、着脱時の作業ばらつきを抑えやすく、一定の接触状態を再現しやすくなります。頻繁に着脱する箇所では、安定した接圧を維持できる大電流コネクタの活用も有効です。
しかしどれだけ条件を揃えても、各経路の抵抗を完全に同じにすることは現実的には困難です。そのため、並列接続を前提に設計する場合は、電流がある程度偏る可能性を見込んだ上で、許容電流や温度上昇に十分な余裕を持たせることが重要です。「並列時は設計した通りに電流が分かれて流れる」と考えるのではなく、安全率を考慮した設計が求められます。
また、大電流接続ではコネクタ単体、ケーブル単体の許容電流だけでなく、組み合わせた状態での確認も重要です。コネクタの定格電流に余裕があっても、接続するケーブル側の敷設方法などによる温度上昇が問題になる場合、一方でケーブルに余裕があっても、接続部の接触抵抗や放熱条件による温度上昇が問題になる場合もあります。
並列接続は大電流を流すために有効な手段ですが、電流の偏りがあること忘れてはいけません。
さらに大電流接続では、電気的な性能だけでなく、作業時の安全性や保全性も重要になります。頻繁に着脱する箇所では作業性に優れた接続方式、感電や誤接触のリスクがある箇所では絶縁保護、誤接続を防ぎたい場合にはキーイング構造など、使用環境に応じたコネクタ選定が求められます。

産業用コネクタ&コンポーネンツでは、大電流コネクタの選定に加え、ケーブルの許容電流や耐熱性を考慮したケーブル選定、ケーブルアセンブリまで含めて、用途に応じたご提案が可能です。大電流接続でお困りの際は、ぜひご相談ください。
