
真空環境や高気密を求められる装置において、「ハーメチックシール」は欠かせない重要なコンポーネントです。一般的には「導入端子」「電流導入端子」「フィードスルー」などとも呼ばれますが、いずれも基本的には大気との気密性を確保しつつ、電力や信号を内部に導入するための端子です。
本記事では、真空技術や高気密装置に携わる技術者・設計者に向けて、ハーメチックシールとそのコネクタ化(ハーメチックシールコネクタ、真空用コネクタ)について、基本から最新の動向までを詳しく解説します。
「ハーメチックシール」とは、外気を完全に遮断する密閉構造を持つ導入端子のことを指します。英語の“hermetic seal”は「完全密閉された封止構造」を意味し、その名の通りガスや液体が通過できない高気密性を実現しています。
これらは以下のような用途で広く使用されています:
・真空チャンバー内への電力供給
・宇宙機器や航空機での気密配線
・放射線環境下での信号伝送
・医療機器・半導体製造装置での精密制御
通常の配線ではリーク(漏れ)や接点劣化が発生しやすい環境でも、ハーメチックシールなら長期にわたり高い信頼性を保てます。
ハーメチックシールコネクタ(真空用コネクタ)とは、ハーメチックシール(導入端子)にコネクタ機能を組み合わせた製品です。通常の導入端子ではケーブルを直接溶接またはろう付けする必要がありますが、ハーメチックシールコネクタ(真空用コネクタ)では着脱可能な構造にすることで、組立性・保守性の大幅な向上を実現しています。
コネクタ化により以下のような利点が得られます:
・装置のメンテナンスが容易に : 配線の交換や点検が迅速に
・モジュール化に対応 : 複雑な装置でも柔軟な設計が可能
・小型化に貢献 : 密閉構造を維持しながらスペース効率を改善
・リークリスクの最小化 : 着脱部分もシール処理済で安心
このように、真空用コネクタとしての機能を持ちつつ、従来のハーメチックシールの制約を大きく打破した製品が、ハーメチックシールコネクタなのです。
装置ごとに求められる電気仕様や取り付け条件が異なるため、ハーメチックシールコネクタ(真空用コネクタ)にはさまざまなコネクタ形状が存在します。以下に代表的なタイプを紹介します。
デジタル信号の多重伝送に適した標準形状。真空装置や分析機器での使用実績が豊富です。
産業用センサー接続で広く採用されている丸型コネクタ。堅牢性が高く、小型装置向きです。
軍用規格に準拠した信頼性重視のタイプ。過酷な環境下でも安定動作が求められる場面で使用されます。
高周波信号の伝送に適したコネクタ。真空環境下での測定機器や試験装置に用いられます。
高電力用途に向けた堅牢な構造で、真空・高圧機器にも対応可能です。
これらに加えて、近年では装置の多様化に伴いユーザー独自設計のカスタムコネクタが増加しています。筐体との一体化設計や多極対応など、特注ニーズに対応する製造体制も求められています。
装置の構成が年々複雑化する中で、ハーメチックシールコネクタ(真空用コネクタ)はただの導入端子ではなく、「インターフェース設計」の要として位置づけられつつあります。特に真空やクリーン環境での高い性能要求に応えるためには、以下の観点での選定が重要です。
・気密性能(Heリークレートなど)
・電気仕様(耐電圧・電流容量・絶縁抵抗)
・コネクタ形状・着脱機構の互換性
・材質(SUS, Ni合金, セラミック等)の耐環境性
・納入実績や品質管理体制
また、信頼性だけでなくコストや納期の観点からも、標準品とカスタム品をうまく使い分けることが、現代の装置開発における重要なポイントとなっています。
「ハーメチックシール」や「ハーメチックシールコネクタ(真空用コネクタ)」は、単なる部品ではなく、装置の性能・信頼性・保守性を支えるキーコンポーネントです。特にハーメチックシールコネクタ(真空用コネクタ)の活用は、高気密性を保持しつつ柔軟な装置設計を可能にする、現代の真空装置設計における最適解ともいえるでしょう。
設計初期から最適なコネクタ仕様を検討することは、装置全体の完成度やメンテナンス性に直結します。将来の拡張性や省スペース化まで見据え、ぜひ自社に最適なハーメチックシールコネクタ(真空用コネクタ)の導入をご検討ください。