
自動車業界では電動化の進展に伴い、E-Axle(電動アクスル)の開発が加速しています。E-Axleの性能を最大限に引き出すためには、モータの品質や信頼性を確保するための厳格な試験が不可欠です。
中部地方のとある自動車部品関連メーカーでは、E-Axle向けモータ用のテストベンチにおける試験効率や安全性の向上を目的として、従来の端子止めから大電流コネクタへの切り替えを実施しました。
本記事では、その採用背景や導入効果について詳しく解説します。
中部地方のとある自動車部品関連メーカー(以下、同社)では、E-Axle用モータのテストベンチにおいて、モータを実際に回転させ、回転時の異音や異常発熱の有無をチェックしています。そのテストベンチでのモータへの給電は端子による端子止めをおこなっていましたが、この方式は以下のような問題があり、試験効率や作業者の安全性に課題がありました。
端子止めの方式では、試験のたびに端子を手動で接続・取り外しする必要がありました。これにより、作業者に負担がかかるだけでなく、試験準備や終了作業に時間がかかり、タクトタイムの長期化を招いていました。また、接続不良や接触抵抗の増加が発生するリスクもありました。
端子止めでは、端子の金属部分が外部に露出しているため、作業中に感電事故が発生する危険がありました。特に高電流を扱う試験では、感電による事故は重大な安全リスクとなります。
同社はこれらの課題を解決するために、大電流コネクタを採用しました。同製品の採用により以下の導入効果がありました。
大電流コネクタは、ワンタッチで確実に接続・取り外しが可能なため、試験準備や終了作業が大幅に簡略化されました。これにより、試験にかかるタクトタイムが短縮され、1日あたりの試験回数が増加しました。結果として、試験効率の向上と開発スピードの加速が実現しました。
大電流コネクタにはタッチプロテクション(二重絶縁構造)が採用されており、コネクタの金属部分が外部に露出しない設計となっています。これにより、作業者が金属部分に接触しても感電するリスクがなく、安全性が飛躍的に向上しました。
採用した大電流コネクタは、マルチラムという独自の特殊バネ接点を採用しています。これにより、以下の効果が得られます。
・定格400Aという高い電流値でも発熱や接触抵抗を抑制
・コンパクトな設計により、試験設備内のスペース効率が向上
・ワンタッチ操作で着脱ができるため、作業性が向上
一般的なコネクタと比較しても、接触抵抗や発熱量が低減されるため、試験中の電流伝送が安定し、精度の高い評価が可能となりました。
同社では、大電流コネクタによる試験効率向上や安全性改善の効果を受け、他の試験設備や量産ラインへの適用を検討しています。また、試験スピードの向上により、製品開発から市場投入までのリードタイム短縮が期待されています。
同社のE-Axle向けモータ用テストベンチにおける大電流コネクタの導入は、試験効率、作業者の安全性、そして製品品質の全てにおいて大きな成果をもたらしました。特にタクトタイム短縮と感電リスク解消、発熱・接触抵抗低減というメリットは、今後のEV開発において重要な要素となります。