

製造現場における地震対策は、装置や設備の保護だけでなく、従業員の安全確保や事業継続にも直結する重要なテーマです。特に、オイルバス(油浴)を用いた熱処理装置や洗浄装置では、地震による転倒や破損が油漏れ・火災・感電事故などの二次災害につながる恐れがあります。
こうしたリスクに備え、中部地区にある某自動車部品メーカーでは、産業用コネクタ&コンポーネンツで取り扱っている感震器を採用した「感震ユニット」を導入しました。
既設の漏電ブレーカーを活用しながら、安全対策を強化する取り組みです。
同社のオイルバス装置は、長期間稼働している既設設備で、制御盤やブレーカー構成は従来型のままでした。これまでは、地震発生時にオペレーターが手動で電源を落とす運用をしていましたが、地震直後は現場が混乱し、人の判断や操作に頼る対応ではリスクが残ることが課題となっていました。
「現場の誰もが安全に、確実に電源を遮断できる仕組みを作りたい」―このご要望を受け、既存ブレーカーに後付け可能な感震ユニットを導入することになりました。
産業用コネクタ&コンポーネンツで取り扱っている感震ユニットは、震度5相当以上の揺れを検知すると漏電ブレーカーへ信号を送り、電源を自動で遮断する機能があります。疑似漏電信号を出力してブレーカーを動作させるタイプと、制御盤へ信号を送るタイプの2種があり、設備仕様に応じた構成が可能です。
この製品の特長は、既設の漏電ブレーカーに後付けできること。制御盤や配線の大規模改造が不要で、導入コストを抑えながら短期間で運用を開始できます。
また、感震ユニットは震度5弱または5強の仕様で選択が可能です。同社では、生産ラインの特性と安全要求を踏まえ、不要な遮断を避けつつ確実にリスクを回避できるよう「震度5強」で設定しました。
感震ユニットを設置した同社では、通常稼働中での動作検証を行い、日常の振動や作業時の衝撃では反応しないことを確認しました。設定震度に満たない揺れでは遮断が発生せず、誤作動のない安定した運用が実現しています。
また、遮断信号の伝達速度やブレーカー動作も検証され、地震検知から電源遮断までの動作がスムーズであることを確認できました。
現場担当者からは次のような声が寄せられています。
「導入後は安心感がまったく違います。手動で電源を落とす必要がなくなり、作業者が安全確保を最優先に行動できるようになりました。労災防止の観点でも大きな効果を感じています。」
この結果を受け、同社では今後、他の電源系設備やラインへの展開も計画中です。人の判断に依存しない“自動遮断”の仕組みが、安全文化の定着にもつながっています。