
近年、海運業界では二酸化炭素(CO₂)排出削減や大気汚染防止の観点から、陸電(Onshore Power Supply: OPS)の導入が世界的に進んでいます。陸電とは、船舶が港に停泊している間、船内の発電機(補機関)を停止し、陸側から電力を供給する仕組みのことです。これにより、港湾周辺の騒音・振動の低減、窒素酸化物(Nox)・硫黄酸化物(Sox)・粒子状物質(PM)などの大気汚染物質や二酸化炭素(CO₂)排出削減、さらに燃料費・整備費の削減にも大きく貢献します。
こうした潮流の中で、港湾設備の陸電化に取り組む関東地方にある海洋関係のとある法人では、東京および神戸の港湾におけるOPSシステムの構築において、船舶向け陸電コネクタとして産業用コネクタ&コンポーネンツで取り扱っている大電流コネクタ(電源コネクタ)を採用しました。本稿では、その背景と採用理由を詳しく紹介します。
同法人では以前、他社製のコネクタを陸電システムに使用していました。しかし、現場では次のような課題が顕在化していました。
従来コネクタは構造的に大きく、1つあたりの重量も重いため、船舶と陸側の間での接続・取り外し作業が非常に負担でした。特に港での運用は潮風や湿気、段差などの影響もあり、片手での操作が難しい構造では現場での作業効率を大きく低下させていました。
他社製コネクタは金属端子部が一部外部にむき出しの構造であったため、雨天や海水飛沫の影響下では作業者の感電リスクが懸念されていました。特に海洋環境では塩分を含んだ水分が導電性を高めるため、安全面での改善が急務とされていました。
このような背景から、同法人では「軽量」「安全」「容易な着脱」が可能な新たなコネクタを探していました。
同法人が最終的に採用したのが、軽量・コンパクトな構造と二重絶縁設計を採用した大電流コネクタ(電源コネクタ)です。
この製品は、海洋・港湾用途の厳しい環境下でも高い信頼性を確保できるよう設計されており、以下の特長が評価されました。
従来のコネクタのようにねじ固定や工具を必要とせず、ワンタッチで確実にロック・解除が可能。作業時間が短縮され、船の入出港時の電源切り替えがスムーズに行えるようになりました。
大電流コネクタ(電源コネクタ)でありながらマルチラムという特殊な接点を採用することにより、片手でも容易に操作できる軽量・コンパクト化を実現しました。港湾現場での取り回し性が飛躍的に向上し、作業者の負担を大幅に軽減できました。
本製品は内部の金属部を完全に樹脂で覆う二重絶縁構造を採用。金属部が外部に露出しないため、海水飛沫や湿気のある環境でも感電リスクを最小化できます。また、誤接続防止構造により安全性がさらに高められています。
新しい大電流コネクタ(電源コネクタ)を導入したことで、同法人では以下のような効果が得られました。
ワンタッチ接続により、船舶の入出港時の電源切り替え作業が従来の半分以下の時間で完了。作業負荷が軽減され、港湾運用全体の効率も向上しました。
二重絶縁構造により、雨天時や高湿度環境でも作業者の安全が確保され、感電事故のリスクをゼロに近づけることができました。
陸電化によって船内発電機の稼働を停止できるため、年間を通して二酸化炭素(CO₂)や窒素酸化物(Nox)排出を大幅に削減。燃料費・整備費の削減効果も得られ、経済的にも大きなメリットを生み出しています。
国際海事機関(IMO)による温室効果ガス排出規制の強化を背景に、OPS(陸電化)は今後さらに拡大していくと見られます。特に日本国内でも、主要港湾でのOPSインフラ整備が国主導で進んでおり、高信頼性・高安全性の大電流コネクタの需要は今後さらに高まると予測されており、港湾の静粛化・脱炭素化を支える基盤技術として、この大電流コネクタ(電源コネクタ)は今後ますます重要な役割を果たすことになるでしょう。
本採用事例では、同法人が従来品の課題を克服し、軽量・安全・高信頼性を兼ね備えた大電流コネクタ(電源コネクタ)を採用することで、港湾の陸電化(OPS)に成功したケースを紹介しました。
この採用事例は、海洋・港湾インフラの電化が進む今、環境負荷の低減と作業安全性を両立させるソリューションとして注目されています。
産業用コネクタ&コンポーネンツが提案する「大電流コネクタ(電源コネクタ)」は、未来のクリーンな港湾づくりを支える重要なキーコンポーネントとなっています。